熟年離婚で特に注意しなければならないのは、離婚後の経済的生活基盤を確保できるかどうかです。
特に女性はある程度の年齢を重ねていると再就職が非常に困難になるケースが多く、生活していくだけの安定的な収入を得られるかどうか、じっくり考えなければなりません。
自分自身の今後の生活を見据え、熟年離婚を有利に進めていくポイントをお伝えいたします。
まずは現在の生活と、離婚後の生活の違いを現実的に考えた上で、収入がどれだけ変わるのか、生活費がどれだけ変わるのか、自分はどれだけの変化まで譲歩できるのか、を書き出してみましょう。
そして次に、果たして自分は生活をしていけるだけの経済的生活基盤を持っているのか、また、どのようにすれば生活基盤を確保できるのかを考える必要があるでしょう。具体的には、「年金分割」、「財産分与」といった制度の利用のほか、実家・子供・友人と暮らすことも考慮に入れて、離婚後の生活からできるだけ不安をなくす努力をしなければなりません。
不安を軽減し、安心して離婚後の生活を営むためにはどのような手順を踏めばよいのか、その重大な問題を考えるに当たっては、経験豊富な弁護士に相談することをお勧めします。
どちらか一方が離婚を申し出たあとに辿る道筋はいくつか考えられます。
一般的には、まずは夫婦の間で離婚についての話し合いをして、「協議離婚」を目指します。
そして、当事者間での話し合いによる合意が無理であれば、次に家庭裁判所に調停を申し立てて「調停離婚」を目指します。
調停が不成立となった場合には、さらに訴訟提起をして「裁判離婚(和解離婚を含む)」を目指すという順になります。
熟年離婚を考えたとき、女性にとって離婚を相手に切り出すベストなタイミングは、定年退職後です。
会社によって異なりますが、多かれ少なかれ退職金が満額支給されますので、財産分与の額が大きくなります。
そのために耐え続けることは精神的にも肉体的にも辛いことですので、精神的に追い詰められる前にまずは準備のためにご相談ください。
しかし、熟年離婚においては、なるべく多くの離婚給付を受けられるかどうかが離婚後の生活を左右しますので、一般的な道筋をたどる前に、まず、周到な準備が必要となります。
前述の年金分割についてしっかり把握しておくことや、財産分与を間違いなく受けるための財産保全をしておくことなど、やらなければならないことがいくつもあります。
離婚の手続き、財産の保全に関する申し立て(仮差押手続)等について、経験豊富な弁護士に相談することをお勧めします。
ご自身で離婚を切り出す場合は、どういう内容を伝えるか、予め紙に書いて整理をしておくと良いでしょう。
特に、なぜ離婚したいのか、離婚に際しての要求事項(財産分与、慰謝料、養育費など)を中心に、端的に冷静に伝えることが大事です。
感情的にならず、自分の意思を冷静に伝えましょう。
一方、離婚は絶対にしたいけれど、相手方とのトラブルを避けたいので、離婚の硬い意思があることを伝えることと離婚の手続き全て弁護士に依頼したいという方も多いです。
また、DV・モラハラなどで伝えるのが怖いなど、離婚を言い出せない方もたくさんいらっしゃいます。
そんなときは、弁護士にご相談・ご依頼ください。
弁護士から相手方に「離婚」を通知することで、より本気度が伝わります。
また、相手方と顔を合わせることなく、離婚条件交渉や離婚手続きを進めることが可能です。
離婚後の生活を確保する上で、前述の通り「財産分与」をどうするのかは大きなポイントとなります。
特に熟年離婚の場合、結婚生活が長かった分、夫婦共有財産が多くなる傾向があります。
不動産、預貯金、車、貴金属類などのほか、退職金や借金も財産分与の対象となりますので注意が必要です。
詳しくは、「熟年離婚と財産分与」を御覧ください。
熟年離婚が多くなったきっかけとして、2007年、2008年の年金分割制度の改正があります。
これにより、夫の年金が最大で半分受け取ることができるようになりました。
そのため、離婚後の生活費について心配だった方も、熟年離婚に踏み出せる様になりました。
詳しくは、「熟年離婚と年金分割」を御覧ください。
熟年離婚において、離婚の理由は色々とあると思いますが、事由によっては相手に慰謝料を請求することができます。
ただし、時効がありますのでご注意ください。
どのような理由で慰謝料が請求できるのかは、「熟年離婚と慰謝料」を御覧ください。
若い方の離婚と違い熟年離婚の場合は、その後それほど遠くない未来に「相続」の問題が発生します。
特に、離婚後に自分が再婚した場合、相手方が再婚した場合など、状況に応じて相続が複雑化する可能性があります。
詳しくは、「熟年離婚と相続」を御覧ください。