モラハラとは、「モラルハラスメント」の略語です。
モラルは倫理・道徳、ハラスメントは、嫌がらせの意味ですからモラルハラスメントとは、直訳すれば、倫理・道徳に関する嫌がらせのことです。
たとえば、夫が「〇〇は~であるべき」との倫理観・道徳観を持っていたとして、それを妻に執拗かつ一方的に押し付け、受け入れなければ、ダメな人間だと貶すような状況をモラルハラスメントといいます。
このようなモラハラの与える精神的ダメージは深刻であり、ときにはモラハラを原因として、うつ病などの精神疾患を抱えてしまうこともあります。
今回は、モラハラ夫との熟年離婚について解説します。
多様な価値観を持つ人間同士が円滑にコミュニケーションを図るためには、相手の価値観の尊重を必要とします。
夫婦関係でも同じであり、相手の価値観を否定して自分の価値観を一方的に押し付けるモラハラ行為は、相手に関係の解消、つまり、離婚したいとの気持ちを抱かせます。
夫婦間のモラハラは、家庭という閉鎖的空間において起こる現象であることに加え、家庭の問題を外部に晒すことに抵抗感を持つ方が多いため、被害者は1人で悩み続けてしまうことも多いようです。
しかし、モラハラの加害者は、自分の価値観・道徳観は正しく、相手は間違っているとの強い固定観念に囚われてしまっているため、話し合いでの解決は至難の業です。
夫の行動がモラハラだと感じたら、公的機関などに相談するなどして1人で問題を抱え込まないようにしましょう。
夫のモラハラに耐え兼ね離婚を決意したとき、どのような方法により、離婚できるのでしょうか。
離婚の方法には合意による離婚と裁判による離婚の2つあります。
前者は、夫婦の話し合いにより、お互いに離婚について合意するものです。
協議離婚、調停離婚は、共に夫婦の合意による離婚です。
もっとも、モラハラ夫は、大抵の場合、離婚を簡単には受け入れません。
自分が正しく、離婚を求める妻が、間違っていると思っているからです。
そこで、話し合いでは埒の開かないときには、裁判による離婚を選択することになります。
裁判離婚するには、民法上の離婚事由を必要とします。
モラハラは、不貞行為のように具体的に離婚事由として定められているわけではなく、その内容は様々であるため、単にモラハラ行為だけを理由に離婚事由として認められることは、数としては多くないでしょう。
しかし、モラハラ行為に付随する肉体的暴力のある場合や悪質かつ執拗なモラハラ行為のある場合には、婚姻を継続し難い重大な事由に当たるとして離婚事由に該当すると判断される可能性が高いです。
モラハラは、言葉の暴力の一種ですから、肉体的暴力のように目に見える形での証拠を残すことが難しいです。
また、言葉の暴力と単なる夫婦間の口論の線引きは非常に難しいため、モラハラ夫の具体的な行動についてしっかりと証拠を残すことが後々の離婚問題の迅速な解決につながります。
具体的には、モラハラ夫からの罵詈雑言、侮辱の内容を示すメール、実際にモラハラに当たる言葉を発している録音データなどがあるとよいでしょう。それ以外には日記などこまめに詳細かつ具体的に夫のモラハラ行為を記録化することでもよいでしょう。
モラハラ=モラルハラスメント=倫理観・道徳観に関する嫌がらせは、夫婦関係の大切な要素であるお互いの尊重を欠く行為であり、離婚の原因になるとともに、ときには被害者の心に深刻なダメージを残し、精神疾患を生じさせる危険すらあります。
また、家庭内のモラハラは、外部の目に触れないところで繰り広げられるため、1人で問題を抱え悩み続けてしまうリスクがあります。
モラハラ夫と離婚を決意したならば、まずは証拠の収集に努めましょう。
話し合いや裁判において証拠がなければお互いの水掛け論で終わり、最悪、離婚することができないこともあるのです。