医師の夫との熟年離婚

1. 医師の離婚率は高い!?

一般的に、医師は、離婚率の高い職種と思われています。

しかし、他の職種と比較して医師の離婚率の高いことを示す客観的データはないようです。

ですから、医師の離婚率の高さは世間一般のイメージに過ぎないのかもしれません。

もっとも、医師は基本的に多忙であるため、夫婦間のコミュニケーションは少なくなりがちです。

また、医師は高収入であり、憧れの職業ですから、異性からのアプローチも多く、浮気のリスクは高いでしょう。

その意味で、医師は離婚の危機の生じやすい職種であるといえます。

2. 医師の夫と離婚する場合の注意点

2-1. 財産分与

医師の夫との離婚における注意点の1つは財産分与です。

医師は高収入であるため、特に熟年離婚の場合、離婚時の夫婦共有財産は多岐にわたり、多額になることが多いでしょう。

そこで、医師の夫と離婚する際には、しっかりと財産分与の請求を行うことが大切です。

そのとき、以下の2つの点について問題になることがあります。

第1は、財産分与の対象になる財産です。

財産分与の対象になる財産は、婚姻中の夫婦の協力により形成された財産です。

ところが、開業医の場合には、夫婦間の財産を病院の財産に回している場合があります。

たとえば、病院名義の財産でも実質的には夫婦の共有財産であると認められれば、財産分与の対象になるので、注意が必要です。

第2は財産分与の割合です。

基本的に財産分与の割合は、夫婦は平等であるとして2分の1です。

しかし、医師の夫と離婚する場合には、夫婦の共有財産の形成の貢献度について、医師である夫に有利な判断がされることがあります。

医師は誰でもなれるものではなく、夫婦の共有財産の形成に対する貢献度について、医師である夫の努力が有利に考慮されることがあるのです。

実際、過去には、医師の夫との離婚における財産分与の割合について、夫60%、妻40%であるとした裁判例などがあります。

2-2. 医療法人の出資分の払戻

次に、開業医の夫と離婚する場合には、医療法人の出資分の払戻しの問題に注意しましょう。

そもそも、医療法人の出資分の払戻しとは何でしょうか。

平成19年の医療法改正前は、出資持分のある医療法人の存在が認められていました。

要するに病院に出資することができました。

そして、このような出資持分のある医療法人の定款には、通常、社員資格の喪失時に出資者に対する出資額に応じた払戻しを認める記載がありました。

そのため、医師の夫と離婚して、出資持分のある医療法人の社員から退く妻であれば、出資分の払戻しを請求することができるのです。

問題は、払戻しの金額です。

定款には、「出資額の限度」ではなく、「出資額に応じて」と記載していますから、単純に1000万円出資した場合に1000万円を返還することでは足りません。

この払戻しの金額は、医療法人の資産総額×(払戻請求者の出資額÷全体の出資額)により算定されます。

たとえば、医療法人設立時、夫3000万円、妻1000万円の出資をしていた場合、離婚時の病院の資産総額が1億円の場合、払戻額は1億円×(1000万円÷4000万円)=2500万円になります。

どうして、このことが問題になるかといえば、病院の資産は、現預金に限られないため、そもそも払戻額を準備できないこともありますし、計算通りの払戻しを行うと病院の経営が成り立たなくなる危険が生じうるためです。

そのため、開業医の夫と離婚する場合には、この医療法人の出資分の払戻しについて揉めるため、離婚問題は長期化することがあります。

3. まとめ

医師は、高収入である一方、ストレスを溜めやすく、多忙であるため、夫婦関係に亀裂の入りやすい職種です。

医師の夫と離婚する場合には、財産分与と医療法人の出資分の払戻しの2つに注意しましょう。

開業医の夫と離婚する場合には、病院名義の財産でも夫婦共有財産と評価されるものは、財産分与の対象になります。

また、財産分与の割合は基本的に2分の1ですが、医師の夫と離婚するときに、この割合が夫に有利な形で修正されることがあります。

さらに、開業医の夫と離婚する場合には医療法人の出資分の払戻しを請求できる場合があります。